アメリカが畏怖した日本/渡部昇一
ところが、前回述べた「敗戦利得者」によって、その間も「東京裁判史観」が受け継がれた。先ほど、マッカーサーがアメリカの上院で証言したことを紹介したが、その前後の報道は行なわれても、肝心の証言そのものを報じた日本のマスコミはなかった。これは軍事・外交上の機密ではなく、「ニューヨーク・タイムズ」に全文が出ているにもかかわらず、である。
あの頃、「日本は自衛戦争をやった」というマッカーサーの言葉を知ったら、どれほど日本人が喜び、明るくなったかわからない。それを日本のマスコミは隠したのだ。そして隠し続けている。
なぜ、隠したのか。それを報道すれば「戦前の日本が悪かった」といってきた「敗戦利得者」たちの間違いを満天下に示すことになるからだ。これは単に恥をかくだけにとどまらない。敗戦後に得た「利得」や「利権」を失うことにもつながる。そういう人たちはマスコミだけではない。学者にもいたし、政治家にもいた。
日本に浸透している自虐的歴史観、このことに大きな役割を担ったのがマスコミと学者たちである。
「戦前の日本は悪かった」と主張して職を得た人たちを、著者は「敗戦利得者」と呼んでいる。
彼らは、自らの利得のために意図的に偏った情報を流し、それによって世論を形成していった。
戦後の日本は「戦前の日本は悪」とする人々がポストを占め、力をもっていった。
そして、一度、「戦前の日本は悪かった」と書いてしまうと、どの新聞も取り消せなくなり、その路線をひたすら進んでいく。
占領期が終わってもその立場は体制として固まり、東京裁判史観を広め、定着させるシステムが形成された。
ところが、戦後のアメリカ占領政策の中心人物だったマッカーサーが、「彼ら(日本人)の戦争に突入した目的は、それゆえ、主として自衛のため余儀なくされたものであった」と1951年5月3日上院の軍事外交合同委員会で証言している。
つまり「この前の戦争に日本が入った目的は主として自衛のために余儀なくされたものである」といったのである。
ところが日本のマスコミはその証言を意図的に隠した。
事実を事実として報道するのがマスコミの役割だとすれば、これは明らかにおかしい。
そしてそのような流れは今も続いているといってよい。
マスコミの報道を鵜呑みにすることが如何に愚かなことであるか、ということである。
客観報道はない、と思って新聞や雑誌を読むのが正しいマスコミ報道とのつきあい方だと言ってよいのではないだろうか。
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