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2013年10月29日 (火)

帝国としての中国/中西輝政

Photo 朝鮮半島をめぐってではあったが、二一世紀の中国の対外姿勢を占ううえで興味深い「水平的な位相」をはっきりと浮上させた出来事が二〇〇二年五月に起こった。瀋陽にある日本総領事館に北朝鮮からのいわゆる「脱北者」が亡命を求めて駆け込んだのに対し(日本では「ハンミちゃん事件」とも称される)、中国の武装警察が日本側の許可を得ることなく総領事館内(いわゆる治外法権が外交特権として認められている)に立ち入り、「脱北者」を連行していった事件である。しかし、全く同じ日に日本総領事館の隣にあるアメリカ総領事館にも脱北者が駆け込んだが、中国官憲はいっさい手出しはしなかったとされる。そして、やや日をおいてではあったが北京の韓国大使館で脱北者が館内に入ろうとするところを中国官憲に連行されそうになり、制止する大使館員と中国官憲との間で乱闘になり「脱北者」が中国側に連れ去られるという事件が起こった。

2002年に起きた、いわゆる「ハンミちゃん事件」はその衝撃的な映像とともに強く印象に残っている。

武装警察が無断で総領事館内に立ち入り、脱北者を連行するなど、言語道断である。

著者によると、この問題に対する中国側の対処と事後処理の相違の中に、中国外交の基本的な対外観の混在がきわめて整理しやすい形で、劇的に浮かび上がっている、という。

まずアメリカに対しては、近代国際法の原理に則って、外国公館の不可侵を忠実に守り亡命脱北者の出国についても人道的見地を重んじるアメリカ側の意向に配慮して処理した。

韓国に対しては、後日、韓国側に正式に謝罪し韓国側と協議のうえ、いわば円満に出国させている。

一方、日本に対してはいっさいの謝罪は行わず、また日本側の抗議を無視してフィリピン政府との直接交渉によってフィリピンへ出国させた。

つまり中国は相手によって国際秩序の基本原則を使い分けているということ。

いわばトリプルスタンダードである。

中国の対外アプローチは、西欧、東アジアの歴史的な「周辺国」、そして日本という三つの対象に、それぞれ別個のスタンダードを適用している。

それが象徴的に現れたのが、脱北者への処理で異なるアメリカ、韓国、日本への扱いであるといえよう。

こうなると、日米安保の重要性が改めて浮き彫りになってくる。

日本の背後にアメリカがいることによって、中国は西欧に対するアプローチ、つまり近代国際法の原理に則って対処せざるを得ない状況に追い込まれている。

ここに中国のジレンマがあるのであろう。

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