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2013年11月22日 (金)

考え抜く社員を増やせ!/柴田昌治

Photo 東京電力の企業努力に決定的に欠けているもの。形の上ではしっかりとした対策を取っているように見えてはいても、結局、肝心なところには触れないままに済まされてしまっていること。それは、要所要所で「意味・目的・価値などを事実に基づいて徹底的に考え抜く」という姿勢を残念なことに企業としてまったくと言えるほど持っていなかったためではないか、と私は考えています。そして、そのことと深く関連するのですが、東京電力が結局、「問題はあってはならない」「失敗というのは、してはならないもの」といった、精神論に縛られた価値観が支配する世界にどっぷりつかっていたということです。そのことが原子力を扱う者として絶対に欠かしてはならない「事実を客観的にみる」という姿勢を失わせてしまっていたのです。再発防止の企業努力は十分すぎるぐらいしたけれども、この〝精神論の世界〟から脱却しようという努力はまったくしなかったことが、すべての努力を無にしてしまったのです。

本書が言っていることは、「意味・目的・価値などを要所要所で事実に基づいて徹底的に考え抜く」という習慣を組織の中に育てていくことが、先の見えにくい、難しい今という時代だからこそ必要になってきている、ということ。

今の社員は効率ばかりをもとめられ、目の前のことをどう処理するかということには長けている。

ところが、自分のしている仕事はそもそもどんな意味があるのか?

社会にどんな貢献することを求められているのか?

と、そのような本質的なことを考えなくなった。

これが原因になって、企業は力を失ってきている、と述べている。

たとえば、東京電力はどうしてあのような人災を起こしてしまったのか?

それは「人間は失敗をする生き物である」という事実に立脚した当たり前の考え方をしてこなかったから。

この考え方の真逆にあるのが、「失敗というのは、してはならないもの」という精神論的な考え方。

この延長線上にあるのが、原子力発電は安全でなくてはならないし、安全である、というまさに精神論的な決め付け。

そして安全なのだから、避難訓練などする必要はない、と考える。

避難訓練がまったくなされなかったという驚くべき事実はこうした価値観を持っていたからである。

もちろん、原子力発電所は安全でなくてはならないのだが、「安全なのだ」と精神論で決めつけてしまっても安全は確保できるわけではない。

原子力発電はそもそも危険で極めてデリケートな存在。

だからこそ、安全に操業すべく、事実に忠実に細心の注意を持って最大限の努力が必要とされる。

東京電力が持っていたこうした精神論的な決め付けこそが事実を見誤らせ、再発防止のすべての努力を無にしてしまった元凶だったと著者は述べている。

「意味・目的・価値などを事実に基づいて徹底的に考え抜くという姿勢を会社としてしっかりと持つ」ということは、「自分の会社が社会の中で、どのような位置にあり、社会のために何ができるのか、を問う姿勢と能力を持つ」ということでもある。

このような本質的な問題を考抜く社員を育てる事こそ、今の会社に求められているのではないだろうか。


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