習近平と中国の終焉/富坂聰
外国人が共産党支配を過大評価してしまうのは、13億人にもおよぶ国民がいかにも権力に抑えつけられて大人しくしているように見えるからであろう。この視座で見たとき、共産党が何を基準に判断し行動するのかを理解するのは難しくなる。
中国共産党は、常に国の本当の主役である人民を意識して政策を行っている。はっきりいえば、共産党は人民を恐れている。
中国で問題が起きると必ずといって良いほどテレビのコメンテーターとして登場する富坂氏。
氏は、中国共産党が一番恐れているのは人民である、と述べている。
そしてこの視点で見たとき、すべてが見えてくるという。
日本から見ると、いかにも中国共産党が人民を押さえつけているように見える。
しかし、中国共産党にはそんな力はない。
情報統制するのも、尖閣問題で強硬になるのも、すべて人民が恐いからといえる。
社会主義の中国が改革開放の名の下で市場経済の要素を持ち込んだ瞬間から、国民は豊かな暮らしを求めるようになった。
豊かさに触れた13億人の国民は、やがてお腹いっぱいに食べられ、子供に教育を与え、1年に1回は家族旅行ができるような生活を希求するようになっていく。
では、それを等しく国民に与えることはできるのか。
答えはノーである。
そうした等しく豊かな社会を思い描くことが13億の人口を抱える国にとって巨大な幻想であることは、いまや誰もが知るところである。
今、中国の社会を支配しているのは、社会主義的な平等ではなく、自由競争が生んだ格差である。
今や、群衆デモは年間20万回ないしは30万回に及ぶという。
こうした事態を前に、中国共産党はさらにその先を恐れている。
今後もし中国が本格的な経済の失速段階に入ったらどうなるのか。
人民の矛先は中国共産党に向かうことは明らか。
昨年、尖閣諸島を日本が国有化したことをきっかけにして日中間に軍事衝突の危機が囁かれる場面があった。
戦争によって両国経済におよぶ被害、さらには国際社会のなかでの地位の低下などを考えれば、手にできる利益などほとんどないことは中国共産党もわかっているだろう。
だが、彼らが絶対に戦争に踏み切らないかといえば決してそうとはいえない。
対日政策に憤りを感じた大衆によって権力の座から引きずり下ろされるという恐怖が迫ったとき、指導部がどのような判断を下しても不思議はない。
大衆による為政者への圧力は、それほどの力を秘めているといえる。
中国共産党vs人民という構図。
今後もしっかりと見極めていく必要がありそうだ。
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