« 上司の心得/童門冬二 | トップページ | 国家の存亡/関岡英之 »

2013年12月19日 (木)

日本人というリスク/橘玲

Photo  八〇年代アメリカは製造業を中心に大規模なリストラが相次いで、日米貿易摩擦がもっともはげしくなった時期です。それでもアメリカの製造業の労働者たちは自分の仕事に満足していて、友人にもこの仕事を勧めたいと思っており、タイムスリップして入社時に戻ることができてももういちどいまの会社に就職すると答え、自分の仕事人生は合格点だと感じています。
 それに対して八〇年代後半の日本経済はバブルの絶頂期で、〝ジャパン・アズ・ナンバーワン〟といわれて我が世の春を謳歌していました。それにもかかわらず日本の労働者(サラリーマン)は自分の仕事に不満で、友人にはこの仕事を勧めないと語り、就活をやり直すことができたらこんな仕事はぜったいに選ばないと答え、自分の会社人生は不合格点だと思っていたのです。

1980年代後半、リンカーン(カリフォルニア大学)とカールバーグ(サウスカロライナ大学)の二人の研究者により、日本人とアメリカ人の仕事観を調べる目的で、日本の厚木地区と米中西部インディアナポリス地区の製造業七業種の労働者それぞれ4000人を対象に、調査が行われた。

それによると、「今の仕事にどれほど満足ですか?」という質問に対して、「満足」と答えたのが、アメリカは34%、日本は17.8%、「不満足」と答えたのがアメリカは4.5%、日本は15.9%

「あなたの友人がこの下位者であなたのような仕事を希望したら、あなたは勧めますか?」という質問項目では、「勧める」と答えたのが、アメリカは63.4%、日本は18.5%、「勧めない」と答えたのが、アメリカは11.3%、日本は27.6%だった。

ほとんどの人は、日本とアメリカのデータが逆になっていると思うだろう。

それほどまでにこの調査結果は衝撃的で、「日本的経営」についての私たちの常識を根底から覆す。

この国では、年功序列と終身雇用は労働者を幸福にする理想の制度で、それを「市場原理主義者」が成果主義で破壊したためにみんなが不幸になった、と信じられている。

しかしこの調査が明らかにしたことは、愛社精神も仕事への献身度もアメリカの労働者のほうがずっと高く、サラリーマンはむかしから会社が大嫌いだった、という事実。

つまり年功序列と終身雇用は、サラリーマンを会社に縛り付ける制度だったということ。

これは、世の中で「常識」とされていることが、単なる「思い込み」であったということを示す一つの事実ではないだろうか。

「常識を疑う」ことの大切さをこの事実は教えてくれる。

« 上司の心得/童門冬二 | トップページ | 国家の存亡/関岡英之 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本人というリスク/橘玲:

« 上司の心得/童門冬二 | トップページ | 国家の存亡/関岡英之 »