孔子とドラッカー/一条真也
ドラッカーは大著『マネジメント』において次のように渋沢を絶賛している。
「率直に言って私は、経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物のなかで、かの偉大な明治を築いた偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界の誰よりも早く、経営の本質は『責任』に他ならないということを見抜いていたのである」
ドラッカーは経営の社会的な責任について論じた歴史的人物のトップに渋沢栄一の名を上げている。
渋沢は生涯で500以上の会社を設立している。
その範囲は、銀行、鉄道、海運、紡績、保険、鉄鋼、造船、ガス、電気、印刷、貿易、倉庫、ホテルというぐあいに経済のあらゆる面に関わる会社を設立した。
渋沢は会社というより500以上の業界をつくったといってよい。
彼の経営哲学は「論語と算盤」という言葉に集約される。
そして特筆すべきは、あれほど多くの会社を興しながら、財閥を作ろうとしなかったということ。
利益は独占すべきではなく広く世に分配すべきだと考えていたからであろう。
つまり、企業の社会的責任を常に考えていたといえる。
近年になって企業の不祥事が度々起こっている。
企業が儲け主義に走っているといわざるを得ない。
もう一度経営者は企業は何のために存在しているのかという「責任」から自らの経営を建て直す必要があるのではないだろうか。
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