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2014年2月 6日 (木)

勝つ組織/佐々木則夫、山本昌邦

Photo たとえば、なかなかシュートを打とうとしない状況を打破するために、「もっと打たなきゃダメだよ」と言っても、ハーフタイムの緊迫した状況では弱い。選手の心にはなかなか届かない。口には出さなくても「そんなのは分かっているけど、なかなか打てないんだよ」という気持ちを抱いているかもしれない。でもそのときに、
「宝くじは、買わなきゃ当たらねえだろう」
 と言うと、こんなときに何言ってるの? という驚きや疑問が走ります。選手たちは私の真意が気になります。そこで、本当に伝えたいことを明かします。
「シュートも、打たなきゃ入らないよ」

本書は、なでしこジャパンをFIFA女子ワールドカップ世界一に導いた佐々木則夫氏と、元アテネ五輪男子サッカー日本代表監督の山本昌邦氏の対談。

その中で、佐々木氏は指導者にとって言葉が如何に大事かを語っている。

野球の監督は、試合中であっても個々の選手に語りかけたり、バッターボックスに立つ選手にサインを出したりと、事細かな指導をしたり指示を出すことができる。

しかし、サッカーの監督は試合中選手を見守るだけ。選手交代をすること以外、やることはない。

よく野球とサッカーの監督の違いを映画監督と舞台の演出家の違いに例えられる。

つまり映画監督はワンカットワンカット、細かな指導ができる。

ところが、演出家は舞台までの練習では指導できるものの、本番では見守ることしかできない。

それとよく似ているというのだ。

そのようなサッカー監督が、試合中、唯一、選手を指導することが許されるのはハーフタイムの時間帯である。

サッカーのハーフタイムは15分間。

女子サッカーの場合、最初の2分間、選手は着替えをするため、監督はロッカールームに入ることはできない。

ということは、実質、13分間ということになる。

しかも、選手はある種の興奮状態にある。

その中で、選手の心に届く凝縮されたインパクトのある言葉を語る必要がある。

くどくどとした言葉では伝わらないし、時間もない。

ではどのような言葉を選ぶのか。

監督の手腕が最も問われる瞬間である。

たとえば、シュートが少なかった前半の戦いぶりがあったとする。そのことは他ならぬ選手自身が痛感している。
会場のサポーターからも「もっと打て」とヤジが飛んでるかもしれない。

その時「シュートが少ないだろう」と監督が迫ったら、歯がゆさが増すばかり。

「そんなことわかってんだよ」と反発されるかもしれない。

選手から精神的ストレスを取り除きつつ、シュートの意識を植えつけるためにはどんな言葉を選ぶ必要があるのか?

そんなとき、最初に比喩を使い、次に本質を突く二段階の指示は非常に有効だと佐々木氏は言う。

最初に「何ソレ」と思わせ、次に「ナルホド」と思わせる。

それにより、その短い言葉が選手の心の奥深いところに届く。

結果、意識が変わり、行動が変わる。

読んでみて、なでしこジャパンのFIFA女子ワールドカップ世界一は単なるフロックではなく、佐々木監督の日頃の創意工夫の積み重ねの賜物であったことが良くわかる。

サッカーの監督に限らず、指導者はもっと言葉に対する感性を磨き、工夫する必要がある、と考えさせられた。

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