元ドイツ情報局員が明かす 心に入り込む技術/レオ・マルティン
仕事上の関係にもプライベートな関係にもいえることだが、人間関係の根底にある前提は責任だ。自分は頼りになるパートナーだと最初から示すこと。一度だけこれ見よがしに見せるのではなく、繰り返し示す。最初はもとより、数年、数十年と経った後も繰り返し示す。頼りにならないという印象を一度でも与えたら、それは人間関係を傷つけるので、もう一度信頼を取り戻すために苦労することになる。情報員は約束を必ず守る。やると言ったことは必ず実行する。信頼関係を築く方法として、要求されなくても進んで約束を与え、それを必ず守る。
情報局員にとって重要な仕事の一つに優秀なV人材をいかに獲得するかというものがある。
V人材のVは、ドイツ語で信頼を意味する〈Vertrauen〉の頭文字、つまりV人材とは信頼できる人のこと。
犯罪組織内で揺るぎない信頼を得ている人がV人材。
この信頼のおかげで、犯罪組織内を自由に活動することができる。
だからこそV人材から得られる情報は重要なものとなる。
しかし、そのような人材を獲得するためのハードルはとてつもなく高い。
V人材は二役を演じることによってとてつもない危険にさらされる。
組織にバレた場合、運がよければ破門になるだけで済むが、消される可能性がある。
つまり自分の命を危険にさらすことになる。
犯罪の世界では、誰も二の足を踏まない。
組織に反する行動を取れば、血の報復を覚悟しなければならない。
V人材も、もちろんそのことを知っている。
ではそれまで面識すらなかった人に、危険きわまりないゲームに加わる決心をさせるにはどうするのか。
本書はそのためのテクニカルな部分が詳細に書かれているが、結局決めてになるのは「信頼関係」「責任」「約束を守る」という人間性の基本となる部分だという。
これらはビジネス、政治、教育等、どの分野でも共通していえるものと言えそうだ。
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