命のビザを繋いだ男/山田純大
杉原が発給したビザはあくまでも日本を通過することを許可するビザであり、彼らに許された日本での滞在日数は多くても十日ほどであった。
たった十日間で目的地の国と交渉し、船便を確保するのは不可能である。ユダヤ難民たちはビザの延長を求めたが、その願いは叶わなかった。
もし、ビザが延長されなければ、ユダヤ難民たちは本国へ強制送還されることになる。それは彼らにとって“〝死”〟を意味していた。
そんなユダヤ難民たちの窮地を救った一人の日本人がいた。
その人の名は小辻節三。
俳優の書いた本ということで、あまり期待しないで読んだのだが、いい意味で期待外れだった。
正直、感動した。
命のビザを発給した杉原千畝は、「日本のシンドラー」として有名だが、小辻節三という人物がいたということは本書を読むまで知らなかった。
杉原の大英断によって多くのユダヤ難民たちがホロコーストを逃れ、日本へ向かった。
ユダヤ難民たちが日本へと押し寄せた当時、ナチスドイツはナチス親衛隊の幹部を日本に常駐させ、日本にやって来た難民たちへの迫害を画策していた。
もし、開戦後もユダヤ難民たちが日本に残されたままだったとしたら、彼らの身にナチスの魔手が襲いかかった可能性は大きい。
そんな中、小節三は次々と神戸に辿り着くユダヤ難民たちの窓口となり、日本政府と様々な形で交渉し、ビザの延長を実現させる。
それだけではなく、ビザがないため日本に入国できず、日本海の船上で助けを待つユダヤ難民たちに救いの手を差し伸べたり、彼らが日本で安心して生活を送れるように尽力した。
また、目的地へ向かう船便の確保のために船会社と交渉するなど東奔西走した。
当時、日本とドイツが同盟を結んでいたことを考えると、それは生命を賭した闘いだったといってよい。
このような人物がいたということ、同じ日本人として誇らしい。
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