静かなリーダーシップ/ジョセフ・L・バダラッコ
シュバイツァーは多くの人の人生を変え、無数の人々に感動と励ましを与えたが、世界を形成する偉大な人の役割について、自伝の中で次のように書いている。
人間の理想を貫こうとする人のうち、大衆の目に留まる行動を示せる人はごくわずかしかいない。その他の人はすべて、人目につかない小さな行いに甘んじている。しかし、そうした小さな行いの積み重ねは、大衆に広く認められる行動よりも、何千倍も強いものだ。小さな行いの積み重ねが深い海洋なら、大衆に認められる行動は、その海洋に浮かぶ波の泡のようなものである。
リーダーシップという言葉から受けるのは、高い理想と強い信念でみんなをグイグイと引っ張っていくというイメージだ。
ケネディ大統領、サッチャー首相、チャーチル首相等が思い浮かぶ。
しかし、本書で著者が語っているリーダー像はそれとはまったく違う。
ほとんどの場合、最も実践的なリーダーは大衆のヒーローではなかった。
高尚な理想を掲げた人でもなく、またそうなりたいと思っていた人でもなかった。
倫理的な使命観をもって周りを率いている人でもない。
真のリーダーとは、忍耐強くて慎重で、一歩一歩行動する人、
犠牲を出さずに、自分の組織、周りの人々、自分自身にとって正しいと思われることを、目立たずに実践している人だった、というのである。
サーバント・リーダーシップがこれに近い考え方なのかもしれない。
ただ、リーダーらしくない人が、実は組織の見えないところで、大事は働きをし、組織を動かしていたという例は意外と多いのかもしれない。
特に、会社の中間管理職には、そのような「静かなリーダーシップ」が求められるのではないだろうか。
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