知られざる特殊特許の世界/稲森謙太郎
レースのタイムとか筋力の強さといった点以外の要素を、数値化したかったのです。いわゆる「テクニック」とか「センス」といわれる部分を、計量できないかと、そういうことですね。僕自身、身長が2mあるわけでもないですし、ヘラクレスのような体をしているわけでもないのです。それなのに、勝てたのはどうしてなのか? その原因を「センスがあるから」のひとことで済ませるのではなくて、その「センス」を数値化し分析してみたかったのです。
知っているようで知らない特許の世界。
本書は、誰がどのような特許を取得したのか、
そのことを面白おかしく紹介している。
中には、小室哲哉や大仁田厚など有名人も特許を取っている。
実用性を重んじたものもあれば、遊び心満載のものもある。
例えば背泳のオリンピック金メダリスト鈴木大地の特許である水泳トレーニングマシン。
これは泳者の筋力や水中における抵抗力・推力などを測定し、
これを、あらかじめ機械にインプットされた「基準泳者」のデータと比較することによって、
各能力を客観的に判断し、トレーニングに活かすというもの。
ここでいう「基準泳者」について、公報から補足しておくと、
たとえばこのデータを世界的な泳者のものにすれば、
「世界的な泳者に比べて、どの部分が劣っているのかが世界的なレベルで判断ができ、世界的なトップ泳者の育成用のシステムとして利用することができる」
という。
さらに基準泳者を同年代の泳者にすれば、
「同年代との比較において、運動能力の優劣が判断でき、泳者の運動能力の劣っている部分や優れている部分が判り、これを基にして、劣っている部分を強化するようなトレーニングスケジュールを作成して利用することができる」
ともいう。
これを見ると、鈴木大地は科学的トレーニングということをいつも考えていたことがわかる。
体力的に劣る日本人が勝にはどうすればよいのか?
いつもそのことを考えていた副産物がこの特許ではなかったろうか。
この特許が商品化されることはなかったようだが、その思いは伝わってくる。
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