迷わない。/櫻井よしこ
ポンドさんはとても潔癖で、お茶代を払ってもらうこともないのに加えて、お歳暮やお中元の菓子折りが届いても、送り返す人でした。
あるとき、日本の幼児教育をテーマに保育園と幼稚園を取材した帰り際に贈り物が差し出されました。辞退すると、後で郵送されて来ました。ポンドさんは贈り物を救世軍にそのまま寄付し、寄付の証明書を受け取るよう私に指示しました。その証明書に、
「頂戴した品物はこのような形で社会に役立たせていただきました。お気持ちに感謝します」
というカードを添えて、贈り主に郵送したのです。
アメリカのジャーナリズムは取材に関連して物品を受け取ることは決してありません、というピューリタン的な価値観を、確実に相手に伝えたわけです。そこまでこだわるのかと驚くこともありましたが、その方針は徹底していました。
著者の言動が終始一貫していることについては抜きんでている。
どうしてそんなことが可能なのか。
本書を読んでみると、駆け出しの記者だった頃師事し、ジャーナリズムのイロハを教わったエリザベス・ポンド氏によるところが大きかったということがわかる。
ジャーナリストはまず闘うための土俵をつくらなければならない。
その中の一つは取材相手に借りを作らない、ということ。
これがあるから、誰にも色目を使うことなく、正論を論じることができる。
逆にこれが徹底できていないと、どこかでほころびが出てくる。
それが妥協につながる。
著者のこの原体験が今の生き方に大きな影響を与えているのではないだろうか。
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