金融腐蝕列島Ⅱ呪縛(下)/高杉良
北野がビールを飲んで、引っ張った声でつづけた。
「だけどねぇ、グローバルスタンダード、つまり市場万能主義のアメリカンスタンダード一辺倒で、いいんだろうかねぇ。日本型の年功序列主義の見直しは必要だとしても、セントラル自動車の社長さんじゃないけど、終身雇用は死守すべきだと思うんだが」
「外資系の金融機関で禄を食んでる俺が言うのも変だけど、外資系なんてろくなもんじゃないぞ。足の引っ張り合いはもの凄いし、上に対するゴマ擂りも相当なもんだよ。ゴマ擂りの度合いは、日本企業の比じゃないな。それと、稼いでも稼いでも、もっともっとっていう世界だからねぇ。収入はACBの倍以上に増えたが、まだ二年にもならないのに、ACBが懐かしいし、ACBに戻れるものなら戻りたいくらいだよ」
今、資本主義の限界が叫ばれている。
比較の問題でいえば、確かに共産主義よりは資本主義の方が良い。
でも、資本主義にも問題がたくさんある。
資本主義が拡大し続ければ結局、弱肉強食の世界になる。
更に最近は金融資本主義が世界中に拡散してきた。
そして経済はグローバル化してきた。
これにより貧富の格差はますます拡大されてきている。
では、資本主義に換わるものがあるのか?
今、このことが問われているのではないだろうか。
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