続・金融腐蝕列島 再生(上)/高杉良
杉本の腋の下を冷たい汗が流れた。掌も、汗ばんでいる。
「平成五年六月三十日に赤坂の料亭〝はせがわ〟で、北田と会食したことになってますが、事実ですか」
「なにぶんにも古いことなので、覚えてません」
「同じ平成五年七月二日に、新宿歌舞伎町の〝ろうらん〟、通称〝ノーパンしゃぶしゃぶ〟で北田をもてなしたようですが……」
「覚えてません」
「ふざけるな!」
検事が平手でデスクを叩いて、大声で浴びせかけた。
「あなたのノートに書いてあるんですよ。北田は天地神明にかけて身に覚えはないと言ってるんだ。正直に答えなさい」
98年頃の「大蔵省接待汚職事件」を思い出す。
銀行のMOF担とよばれる行員が、大蔵官僚の接待に、歌舞伎町のノーパンしゃぶしゃぶ店を使っていた事が、マスメディアに暴露され、話題となった。
銀行も銀行だが、官僚も官僚である。
バブルに踊り、人としての正常な感覚を失ってしまっているという印象である。
本書はあくまでフィクションだが、あの頃の日本を思い出させてくれる。
バブルとは、日本という会社が放漫経営をしていた時代ともいえるのではないだろうか。
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