組織戦略の考え方/沼上幹
創造性や戦略性を強調する政策をとろうと考えている企業も、まず自社の官僚制機構という足腰のチェックをするべきである。官僚制組織という足腰が揺らげば、どれほどきらびやかな戦略も絵に描いた餅にすぎないのであり、そもそもミスへの対処に忙しくなって、戦略を考えるヒマなどなくなってしまうのである。
官僚制組織というと、何か硬直化した融通の利かない組織、という印象があるが、それは一面しか見ていない。
決められたことを決められた手順でミスなく効率よく行うという点に関して官僚制組織は極めて優れている。
一回その手順とルールの全体プログラムを開発し、皆がその実行に慣れ親しめば、その組織は非常に複雑な作業をいとも簡単に成し遂げることができるようになる。
しかも同じ案件に関しては、常に同じ処理をしてくれるのだから、人の気まぐれに左右されることなく顧客に対して平等に信頼性高く対応することができる。
繰り返し出現する問題を解決する手順やルールがあらかじめ決められていて、各人が自分に割り振られた役柄をそれぞれきちんとこなせば、大量の複雑な仕事を驚くほど効率的に、しかも信頼性高く遂行できる。
組織をつくるメリットはここにある。
これは組織の足腰にあたる部分である。
どんなに高度なスキルを身に付けていても、足腰がしっかりしていないアスリートは優れた成績を残すことはできない。
企業もこれと同じである。
今は戦略性や創造性がなにかと強調されるが、その前提として企業の足腰をしっかりさせることが必要なのではないだろうか。
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