レイヤー化する世界/佐々木俊尚
たとえば、ふくらませた風船をイメージしてみましょう。風船のなかに入ることができれば、風船の膜が境界になって、ウチとソトができる。でも風船の表面を歩いていると想像してみてください。風船の表面は球形になっていて、ウチとソトはありません。ソトを目指してどんどん歩いて行っても、気がつけばぐるりと一周して元のところに戻ってくるだけです。これが境界のない世界。レイヤーは、こういう境界の存在しない形状をしているのです。
レイヤーは、「重ね合わせているもの」という意味。
フォトショップみたいな画像を加工するソフトウェアでよく使われていることば。
つまり、情報技術の進化によって、今や国家や国境という概念があいまいになってきている。
「自分たちこそが、同じ民族の自分たちひとりひとりが結束していることこそが、最大のよりどころなんだ」
これこそが国民国家のスタート地点だった。
国家という概念は、外に敵を作ることによって強固なものとなってきた。
さらに国民国家は「国民」がひとつであるということを維持するために、ソトに敵をつくりたがる。
「外部に敵がいる。一致団結しよう」
「国民総動員で戦わなければ、敵に侵略される」
と言い続けることで、愛国心をあおり、それによって国民国家を維持するというしくみが開発された。
つまりは国のウチとソトを厳密に分けることで、ウチの団結心を高めようと考えた。
しかし、今や、情報は全世界を駆け巡り、企業も多国籍化してきた。
もはや、内と外を明確に区別することはできなくなってきている。
これを著者はレイヤー化という。
今、世界でその変化が起きている。
これをしっかりと見極めることが必要。
もう歯車のように、自分をカチリとはめこむことのできる場所を見つけることはできない。
不安だけど、アメーバのようにくねくねと動き回りながら、自分の居場所をみつける努力を一生続けること。
未来は、このような姿になる。
これが本書のメッセージである。
非常に考えさせられる。
« イシューからはじめよ/安宅和人 | トップページ | クリエイティブ喧嘩術/大友啓史 »
コメント