石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人/早瀬利之
傍聴していた朝日新聞の記者は、東京裁判も傍聴していて、元首相や大臣、大将たちの卑屈な答弁に、むなしさを覚えていた。だが酒田法廷での石原莞爾の答弁に、ある時は失笑し、ある時は一緒になって哄笑するなど、「日本軍人ここにあり」の、救いさえ覚え、証人席の石原の所に駆け寄って言った。
「東京裁判では今までの指導者だった人達が戦犯として裁かれていますが、アメリカになびく卑屈さには胸のつぶれるような、恥しい思いをして来ました。この二日間、将軍の言葉を聴いて、私は日本人として、初めて胸が晴々としました。こんなうれしいことはありません」
石原莞爾は戦犯として裁かれなかった。
しかし本人は戦犯として裁かれることを望んでいた。
裁判の場で、しっかりと日本及び日本人のことを主張したいと考えていた。
本書の大半は、酒田法廷での答弁が記されているが、見事というほかない。
検事とのやり取りでは、完膚なきまでに論破している。
考えてみれば、あの当時、しっかりとした世界観を持っていた軍人は石原以外にはいなかったのではないだろうか。
この人物がしかるべき立場に立っていたならば、歴史は変わっていたかもしれない、と思ってしまった。
歴史にifはない、といわれるが。
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