国が溶けてゆく/林信吾
ヨーロッパ統合の歴史と現実が教えてくれるものは、国境とか国土というものは、血を流し、命を賭けてでも守り抜かねばならない、といった考え方はもはや古い、ということである。むしろ、資源を共同で管理し、経済的な障壁を取り払い、国境を有名無実化し、ついには撤廃して行くことが、平和で、より豊かな社会を築く道であることは、はっきりした。
著者はユーロ容認派である。
本書もユーロを肯定する論調で述べられている。
ヨーロッパの歴史はある意味、血塗られた歴史だった。
それは、国境があるゆえの争いだった。
もし国境がなければそのような争いは起こらなかったのではないか、というのである。
ユーロによって、ナポレオンやヒトラーが、当時の世界では最高レベルの軍事力をもってして、ついになしえなかったヨーロッパ統合が、平和裏に実現した。
これは評価してもよい。
しかし、国境を有名無実化し、ついには撤廃して行くことが、平和で、より豊かな社会を築く道である、と断言してもよいものだろうか。
私はその点については懐疑的である。
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