日本人とは何か。(下巻)/山本七平
徳川時代の政治体制は、分権的でありながら集権体制であるという、世界でも稀に見るものであった。韓国、李朝の完全な中央主権体制と、ヨーロッパ中近世の完全なる分権体制と較べてみると、両者をほどよく結合した形になるのである。すなわち、ここにもいわば二元体制があったといえる。しかも、両者の調和があり、これは今日においても、日本の経済力が非常に適応力があることの原型になっているのである。
徳川時代に現在の日本の発展の原点がある、という。
この分権的でありながら中央集権体制は、世界でもまれなユニークなものであった。
徳川幕府は、大名分国という分離構造を前提にした政権体制を置いた。
諸大名による領地の分有と、その自治的な統治は、安定した土地所有関係によって、農業生活力を向上させ、経済と経営の観念を育てた。
しかし、諸大名が力をつけすぎることは、幕府にとって脅威となる。
そこで参勤交替制という非常に巧妙な発明をした。
これは、諸大名の勢力拡張を抑え込んで、幕府の集権体制を強化し維持する手段であった。
そして参勤交替制は、経済発展に大きな役割を果たした。
参勤交替制による、隔年ごとの諸大名の江戸への往来は、物資の流通、道路の整備、貨幣経済の発達など、全国的経済圏の形成を促進した。
こうしてみると、非常によく考えられた制度であることがわかる。
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