出口のない海/横山秀夫
「勝とうが負けようが、いずれ戦争は終わる。平和な時がきっとくる。その時になって回天を知ったら、みんなどう思うだろう。なんと非人間的な兵器だといきり立つか。祖国のために魚雷に乗り込んだ俺たちの心情を憐れむか。馬鹿馬鹿しいと笑うか。それはわからないが、俺は人間魚雷という兵器がこの世に存在したことを伝えたい。俺たちの死は、人間が兵器の一部になったことの動かしがたい事実として残る。それでいい。俺はそのために死ぬ」
死が間近に迫った人間はどんなことを考えるのだろう。
人間魚雷回天に乗ることが決まった主人公並木。
数か月後には必ず死ぬと人生の終わりを決められてしまった並木は、死の意味を考え出す。
「何のために死ぬのか」と。
国のため、天皇陛下のため、家族のため、恋人のため、・・・等々。
そんな心の彷徨の結果たどり着いたのがこの言葉。
「俺たちの死は、人間が兵器の一部になったことの動かしがたい事実として残る。それでいい。俺はそのために死ぬ」
戦争は人を狂わせる。
多かれ少なかれこのような部分がある。
だからこそ、戦争は決してしてはならない。
起こさせてはならない。
改めてそう思った。
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