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2015年8月11日 (火)

火花/又吉直樹

Photo その日は、世田谷公園を一緒に歩いていた。辺り一面の木々はいかにも秋らしく色づいていたのに、なぜか一本の楓だけが葉を緑色にしたままだった。
「師匠、この楓だけ葉が緑ですよ」と僕が言うと、「新人のおっちゃんが塗り忘れたんやろな」と神谷さんが即答した。
「神様にそういう部署あるんですか?」と僕が言うと、
「違う。作業着のおっちゃん。片方の靴下に穴開いたままの、前歯が欠けてるおっちゃんや」と神谷さんが言った。
 その語調には僅かな怒気が含まれているように感じられた。

今、話題の小説なので読んでみた。

この小説は、芸人仲間の先輩との交流を描いたもの。

寝ても覚めても笑いを取るネタを考えている芸人の日常を丹念に書いている。

特に、先輩とのふざけたやり取りが生き生きと描かれている。

この当りは本業の経験が生きているのだろう。

芸人が、日頃から言葉を大切にしているのがよくわかる。

そして、最後は堕ちていく先輩を描き、ほろ苦さを感じさせる。

一人の若者の成長の記録としても読むことができ、芥川賞を取ったのがよくわかる。

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