海戦から見た日露戦争/戸高一成
世界史上類のない完全勝利を収めたことで艦隊は沸き立ち、国民は驚喜した。ロシア艦隊には負けるべき要素があまりにも多く、日本艦隊には勝つべき要素があった。しかし、東郷長官や秋山参謀にとってこの勝利は違った意味を持っていたのではないか。わが身を削るようにして立てた計画のすべてが無となってしまい、白紙の状態で戦った結果の勝利だったのである。
日露戦争の勝利に日本人は酔った。
興奮に酔えずに醒めていた何人かの男たちがいた。
連合艦隊司令長官東郷平八郎、連合艦隊参謀秋山真之、その他この海戦にまつわる最高機密に関わった男たちであった。
彼らは日本海海戦での勝利が奇跡的なほどの幸運によってもたらされたもののように感じていた。
あの秋山真之の 「本日天気晴天なれども波高し」という言葉。
これは「波が高いので奇襲作戦は決行できない恐れがある」との危機感を表す内容であったと著者は言っているが、そうは伝えられていない。
勝てば全てが美化され美談になってしまう。
人間は、負けたときには反省する。
しかし、勝ったはときには反省や検証することは忘れてしまう。
あるいは、いい加減にしてしまう。
大東亜戦争での敗北は、もうこの時に決まったといってよいのではないだろうか。
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