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2015年8月30日 (日)

しんがり/清武英利

Photo「会社が潰れて全員が不幸になったのか。否ですよ。会社の破綻は人生の通過点に過ぎません。私はサラリーマンとして、幸せな人生を過ごしました」

これは社内調査委員会を率いた嘉本隆正元常務の言葉。

山口証券の破たんと言えば、「社員は悪くありませんから!悪いのはわれわれなんですから!」と泣き叫んだ野澤社長の姿が思い出される。

しかし、この後多くの社員が再就職に奔走する中、その流れに逆らって、最後の仕事に取り組む社員がいた。

その仕事の一つは、二千六百億円にも上る債務隠しの真相究明。

山一という大企業を滅亡に追いやった「簿外債務」。

それはいつ、どのように、誰の決断で生まれ、どのような人間によって隠し続けられたのか。

社員自らの手で疑問を解き、去っていく同僚や家族に明らかにする作業。

もう一つは、一年半を要した会社の清算業務。

社員たちが集めてきた二十四兆円の預かり資産を、顧客に確実に返していく後ろ向きの仕事。

「後軍」(しんがり)という言葉がある。

戦に敗れて退くとき、軍列の最後尾に踏みとどまって戦う兵士たちのことだ。

彼らが楯となって戦っている間に、多くの兵は逃れて再起を期す。

会社破綻を企業敗戦ととらえれば、自主廃業の後で働いた社員たちは、しんがりの兵士そのものであった。

言ってみれば、「貧乏くじ」を引かされたということ。

ところが、あれから15年経った後、たまたま会った彼らに聞いてみると、ほとんどの者がそのことをむしろ肯定的に受け止めていた。

人はカネのためだけに生きるのではない、一番大事なのは「人としての誇り」なのだということを教えられた。

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