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2015年9月23日 (水)

聞かなかった場所/松本清張

Photo つまり、ぼくにはこれ以上失うところはないわけだ。……ところがだ。ぼくが君を脅迫罪で告訴したら、君は役人をしていられなくなる。裁判で判決があるまでは首はつながっているだろうが、係長の椅子からはすぐ転落さ。いや、その前に週刊誌などが書き立てる。君は役所にいられなくなる。君は、長年お世話になった役所や上司の顔に泥を塗ったままではいたくないだろうからな」

この小説の主人公、浅井は農林省課長補佐。

彼は神戸の出張先の宴席の最中、妻の急死を知らされる。

妻は外出先で心臓麻痺を起し、代々木の化粧品店に倒れこみ、医者が駆けつけた時には息絶えたという。

その死因に疑問を持った浅井は、その真相を探るために動き回り、ついに妻が不倫の現場で亡くなったことを突き止める。

そして不倫の相手の男を問い詰めた所、逆に脅されてしまい、正気を失って相手を殺してしまう。

つまり前半では被害者として描かれていた主人公が、後半は加害者となり捜査におびえる男として描かれている。

その中で、その行動の根底にあるのが小利口だが小心者で保身に走る役人の性分である。

浅井は、役人に共通する心理として本省の名誉と、自分のかち得た地位の保持に執着し、かつ、小心であった。

それに対する防衛心が思ってもみなかった犯罪を誘発した。

最後はその小心の故に自ら墓穴を掘ってしまう。

役人の行動特性・思考特性を念頭にこの小説を読んでみると非常に面白い。

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