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2015年10月28日 (水)

逆説の日本史〈12〉近世暁光編/井沢元彦

12 少なくとも、「将軍家に万一のことがあった場合、第一に尾張が継ぎ、第二に紀伊が継ぐ」などという明文はない。だからこそ紀州の吉宗が八代将軍を継ぐ時に、尾張との間で散々もめた。問題は「なぜ明文化されていないのか」ということだ。ヨーロッパや中国では基本的に有り得ないことだ。相続の優先順位というのはきちんと決めておかねば、必ず相続争いを招く。にもかかわらず日本ではこういうことを決めないのは、日本には言霊思想があるからである。
「起こって欲しくないこと」は日本では口にしても書いてもいけない。

徳川家康という人は日本史上屈指のリアリストである。

にもかかわらず「言霊の国」では決してそういうことは書けなかった。

家康自身が「書け」と命令しても部下がそれを拒否する。

コトダマの世界では「そう書く」ことは「それを望んでいる」と誤解されるからである。

現代ですら「有事立法を許さない」という政治家がいて、来年の参議院選挙ではそれを争点にしようとしている。

世界の常識では考えられない国が日本だ。

「有事のための立法」は必ずなされなければならない。

不測の事態から国民を守るのが国家の義務だからだ。

もちろんその内容については大いに議論すべきである。

しかし、そもそも「有事立法は認めない」というなら政治家として国民を守る義務を最初から放棄している、と批判されても仕方がない。

そんな政治家は、日本以外の国ではそもそも議席を得ることすらできないはずだ。

ところが日本ではそういう政治家が当選してしまう。

これだけ危機管理が叫ばれるようになっても、だ。

危機管理にとって一番大切なことは何か。

それは想像力である。

それがどんな不吉な事態であれ、「起こり得る」事態ならば想定して対策を練らねばならない。

問題は起こり得る不吉な事態をどれだけ冷静に想定できるかということだ。

ところが言霊思想は、そのことを否定する。

先の国会でも、有事立法に反対しそれを「戦争法案」と言ってしまうメンタリティ。

つくづく日本は「言霊の国だな」と思ってしまう。

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