逆説の日本史〈9〉戦国野望編/井沢元彦
信長が戦国武将の中で卓越しているところは、初めから日本をどのように変えるか、つまり「日本国改造計画」があったということだ。
もちろん、これは文書の形では残されてはいないが、信長の行動は一貫しているので、その後をたどれば明確にわかる。それは言うまでもなく「寺社勢力を中心とする中世の、日本をダメにしているシステムをすべて解体し、新しい世の中をつくる」ということである。
信長で思い出すのは、桶狭間の戦いや比叡山の焼き討ちである。
特に後者は信長の残虐性を示す例として使われることが多い。
ただ、その理由を調べてみるとそれなりに納得する理由がある。
信長が行ったのは、旧勢力の徹底的な破壊である。
信長の目指したのは寺社勢力の、武装集団、利権集団、政治団体としての「解体」であって、決して宗教そのものの弾圧ではない。
だから、比叡山を焼き討ちしても、天台宗禁教令は出してはいない。
新しい世の中を作るためには、どうてもそれをする必要があった。
そのために信長はそれを果敢に実行したということであろう。
その意味でも信長は自らビジョンを描き、それを実現するために一つ一つを着実に実行に移した、日本の指導者としては極めてまれな人物だったといえよう。
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