かくて昭和史は甦る/渡部昇一
大英帝国が日本と同盟を結ぶことに至ったのは、この北清事変で日本軍が文明国の“模範生”として行動したことが大きかった。当時の北京にいた世界中の先進国の人々を前にして、日本の軍人は飛びきりのファイン・プレーを示したのだ。
アジアの小さな有色人種国家にすぎないと思われていた日本が、かくも規律正しく、勇敢に動いたことが彼らの印象を一変させ、「同盟相手として信ずるに足りる国である」という評価をもたらした。
日英同盟が結ばれた原因として、北清事変での日本軍の模範的行動にあった、というのは、他の歴史書では書かれていない事実である。
結局、この日英同盟があったからこそ、日露戦争に勝利したわけだから、このことは大きかったといえる。
北清事変では、たくさんのイギリス人将校が救援軍に参加していた。
イギリスの「タイムズ」紙の記者なども現場にいた。
彼らが日本の模範的行動を見て、親日的感情を抱いたのは想像にかたくない。
日英同盟の場合、イギリスはアジアの植民地を守るためのパートナーとして、イギリスの国益のために日本を選んだ。
もし、「日本は信頼できる国である」と言う人たちがイギリス政府部内にいてくれなければ、別の相手と同盟を組んだであろう。
結局、国家間の外交も、最終的な決め手となるのは、やはり人間的な信頼ではないだろうか。
そのことを、この北清事変は教えてくれる。
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