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2015年11月30日 (月)

緑衣の女/アーナルデュル・インドリダソン

Photo_2「魂の殺人を断罪する裁判所がありますか?」と彼女は続けた。
「教えてくれますか?魂の殺人をしたとがで、人を裁判にかけ、有罪にすることができますか?」

この小説、凄まじいばかりのドメスティックバイオレンスの描写が印象的だ。

最後は自分の息子に殺されることになる男は妻に対して暴力を繰り返す。

しかし、体がどんなに傷つこうが、どんな苦しみがあろうが、ひどい殴打、骨折、青あざ、目の潰れ、唇の裂けがあろうが、それは魂への暴行に比べたらなんでもない。

決して止むことのない、日々の、絶え間ない恐怖。

それでもまだ最初のころは、まだ生きる力が彼女の中にあったころは、彼女は助けを求めたり、実際に逃げたりもした。

でもそのたびに彼は探し出し、彼女の耳に娘を殺して山に埋めるぞとささやく。

脅しではない、彼なら本当にそんなことをやると彼女にはわかっているから、うなずいてあきらめる。

あきらめて、生きるも死ぬも、すべてを絶対的な力をもつ彼にゆだねる。

彼女は抵抗しなくなる。

それといっしょに生きる力もなくなった。

生きながら死んでしまった。

魂の殺人である。

小説だからこそ書ける内容であろう。

人間の生とは何なのかと考えさせられた。

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