« 無印良品の、人の育て方/松井忠三 | トップページ | 売上目標は立てるな!/岩渕龍正 »

2015年12月 5日 (土)

複眼の映像/橋本忍

Photo_2 女中さんが遠慮気味にいう。
「ここの旅館では、時折、碁とか将棋の名人戦が行われるんです。最初の日はそれほどでもないけど……勝負が決まる二日目になると、お茶を持って部屋へ入ろうとしても、棋士の先生方の凄まじい気迫で、なんだか空気がひどく張り詰めていて、中へ入りにくいんです」
 黒澤さんと小國さんが黙り込んでいる。私もじっと黙り込んでいた。
「でも、今日は……御免なさい、最近はずうーッとそうなんですけど……そんな碁や将棋の比じゃない。もっと殺気だち、ゾクッとするようなものが……原稿を書いている黒澤先生や橋本先生から、部屋一杯に張り詰め、籠っていて、怖くて……恐ろしくて、中へ入れなかったんです。済みません」

黒澤作品の最大の特質は共同脚本である。

当然、その中の一人は黒澤明。

黒澤監督は一人で脚本を書かず、他のライターと一緒に書く。

上記は、名作「七人の侍」の脚本を書いていた時のエピソード。

ライターたちが旅館の一室にこもって脚本を書いていた時、そこは女中さんが入っていけないほど殺気立っていたというのである。

おそらく、その殺気や熱気というものが内なるエネルギーとなり、役者やスタッフに乗り移り、作品にそのまま反映されていったのだろう。

確かに「七人の侍」を観ていると、何とも言えないエネルギーを感じる。

それが感動となる。

最近の映画を観ていてなんとなく物足りなさを感じるのは、このような所の違いから来ているのかもしれない。


« 無印良品の、人の育て方/松井忠三 | トップページ | 売上目標は立てるな!/岩渕龍正 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 複眼の映像/橋本忍:

« 無印良品の、人の育て方/松井忠三 | トップページ | 売上目標は立てるな!/岩渕龍正 »