死の発送/松本清張
二十五歳の岡瀬正平が五億円も役所の金を使い込んだことは、当時、世間を驚倒させた。しかし、若い役人に分不相応の権力を与えすぎていることと、盲判行政による官庁機構の現在を考えれば、別におどろくに当たらない。上司の判コさえベタベタならべれば行政事務が完全だと信じこんでいる役人の事大主義的な愚かな考えこそ嗤うべきであろう。
岡瀬正平は五億円の大半をインチキ事業会社と女との遊興に費消したが、検事の自供によれば、一億円ほど褄が合わない。つまり、使途不明の金である。
本書は役人の公金横領に端を発した使途不明金をめぐる人間の醜い争いの物語。
7年間の刑期を終え出所した岡瀬。
使途不明な1億円について、岡瀬がどこかにひそかに隠匿し、出所してから取り出すつもりであろうと予期して、それを狙った男がいた。
ところが、その岡瀬はしばらくして殺されてしまう。
そして、異常な関心を示していた新聞社の編集長、山崎治郎も殺されてしまう。
誰が殺したのか?
このような形でストーリーは展開されていく。
よくあるパターンだが、人間のドロドロとした世界は、作者がどのようにでも推理を飛躍させることのできる小説という形でなければなかなか描けないのかもしれない。
« ドラマ思考のススメ/平野秀典 | トップページ | 現実が動き出す9つの成功思考トレーニング/夢野さくら »
コメント