喪失の儀礼/松本清張
「それで理由が呑みこめました。……で、その六号室を申込みにきた萩原和枝という女は、いくつぐらいで、どこの人間ですか?」
「品川のほうから来たと管理人に云っていたそうだが、住所は詳しく告げなかったという。年齢は……六十二、三歳ぐらいの老婆だった」
久しぶりに松本清張の小説を読んでみた。
その中で印象に残ったのが、物語の内容そのものよりも、事件のカギを握る女性についての「六十二、三歳ぐらいの老婆」というくだり。
今、六十二、三歳で老婆というだろうか。
もし、ご当人を目の前にしてこんなこと言ったら怒り出すかもしれない。
せいぜい「初老の女」という程度の表現にとどまるであろう。
この小説が出版されたのは1972年のこと。
おそらく、今から44年前ではこういう感覚だったのだろう。
いや、感覚だけでなく、見た目も違ってきているのだろう。
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