日本の歴史をよみなおす(全)/網野善彦
これまでの歴史研究者は百姓を農民と思いこんで史料を読んでいましたので、歴史家が世の中に提供していた歴史像が、非常にゆがんだものになってしまっていたことは、疑いありません。
昔、日本の国民の大多数は農民だった。
残っている資料を調べてみても「百姓」が大多数であったことが証明されている。
少なくともこれが多くの日本人の共通理解である。
ところがそれは「百姓」イコール「農民」と解釈するからだと著者は言う。
「百姓」の本来の意味は「百の姓をもつ人たち」のこと。
つまり「民衆」を意味する。
百姓が農民ではないとすれば、日本の社会の中で非農業民は決して少数派ではないことになる。
つまり古来から日本人は多様な職能をもつ人たちの集まりだった。
鉄を生産して鉄器をつくり、紙もつくり、漆をとって木器・漆器の生産もやっている。
非常に多彩な山の幸を狩猟、採集したり、加工したりしている。
こういう多様な生業を営み、生活していた。
そう考えると、昔から定説となっている日本人論も疑いの目を持つ必要がある。
例えば、代表的なものとして「日本人は農耕民族だった、それと比較して欧米は狩猟民族だった、それが日本人の民族性に大きな影響を及ぼしている」というものがある。
これも少し疑ってみる必要があるのかもしれない。
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