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2016年11月16日 (水)

映画に仕組まれたビジネスの見えざる手/谷國大輔

Photo_2 これまでの日本政府は映画の文化的な価値を認めつつも、映画産業をどこかで単なる娯楽産業と見なして、そのソフトパワーを過小評価し、日本の映画産業がどんどん弱体化しているのにあまり手を打ってこなかった。

最近、日本映画は回復してきているが、一時期は衰退の一途をたどっていた。

大きな要因はテレビなのだが、それだけではない。

例えば、アメリカは日本ほどの衰えはなかった。

ある一定のレベルで歯止めがかかっていた。

それはアメリカが映画を国際戦略の基軸に据えていたからである。

その理由は、アメリカの文化と産業を海外へ輸出するためであった。

そして、そういった国際戦略をとったきっかけになったのが、第一次世界大戦であった。

アメリカは、1917年に第一次世界大戦に参戦することになるのだが、そのことを正当化したかったアメリカは、自由と民主主義のための参戦であることを、国内外に広くアピールする必要があった。

そして、そのためには、国内の世論形成をすると同時に、世界にもアメリカ文化を理解してもらう必要があった。

そこで目を付けたのが、国境を超え、国内の世論形成にも大きな影響力をもつメディア、つまり映画である。

アメリカは、映画には強力なソフトパワーがあることを深く認識し、その頃からすでにそれを実行に移していた。

アメリカにとって映画は単なる娯楽ではなく、国家戦略のツールなのである。

だから、映画産業が危機の時も、国は映画を守った。

フランスには、映画とテレビが共存共栄する仕組みがある。

テレビ局は映画製作に対して一定の割合で映画に出資することも義務づけられており、テレビ局は映画会社のライバルというよりも、パートナーという感覚である。

なぜ、フランスがこのような仕組みをつくったのかというと、フランスは文化の多様性を重んじているからである。

市場原理にばかり依存していると文化が画一化し貧困になってしまうことに危機感を持ち続けているのだ。

映画は娯楽性と芸術性のバランスが大事だとよくいわれるが、放っておくと、このバランスが崩れて、いわゆるアート作品とよばれるような芸術的な映画の制作者が少なくなってしまう。

そうなると、映画の魅力が半減してしまう。

こういった市場の不備を是正する仕組みがある。

映画は自国の文化を他国に見せる重要なメディアであるから、国際戦略として力を入れているということである。

それに比べ、日本にはそのような戦略はない。

文化に対する成熟度に違いなのかもしれない。

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