いまだ人間を幸福にしない日本というシステム/カレル・ヴァン・ウォルフレン
日本の首相がアメリカ大統領と同等の権力を持っていないことは、大半の人々が知っている。ところが日本の首相は、ヨーロッパやアジアでの真に独立した国のトップであれば、必ず持っているはずの権力さえも有していない。
こうした諸国において本来、首相が行なうべきとされている決断を、日本の首相がしようとすれば、ほかの政治家たちから独裁者呼ばわりされるのである。特に有力紙などは、必ずと言っていいほどそれに調子を合わせて反首相キャンペーンを繰り広げる。
本書の主張は、官僚独裁の体制がこの国をダメにしている、というもの。
官僚は政治家と違い国民が選挙で選ばれた存在ではない。
だから、本来官僚は国民から選ばれた政治家のもと行政を行う機関であるべきである。
ところが実態はどうなのか?
官僚をこの国の意思決定から行政まで支配し、政治家には見た目ほどの権力は与えられていない。
政権を築く政治家たちは、たてまえ上は支配下にある省庁に対して、ほとんど影響力を持たない。
政策を立案し、それを調整するのは官僚たちである。
だがほかの官僚すべてを支配する権限を持ち、だれもが同意するような日本の政策を決定できる官僚グループなど、ひとつもない。
事実上の政府のトップとして行動できるような集団が日本にはいない。
つまり、どこにも意思決定に責任を持つ者や集団がいない。
かといって、日本の首相が強いリーダーシップを発揮しようとすると「独裁」だと批判される。
日本の一番の問題はここにあるのではないだろうか。
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