大本営参謀の情報戦記/堀栄三
堀は、ピストでの報告を終って出てきた海軍パイロットたちを、片っ端から呼び止めて聞いた。
「どうして撃沈だとわかったか?」
「どうしてアリゾナとわかったか?」
「アリゾナはどんな艦型をしているか?」
「暗い夜の海の上だ、どうして自分の爆弾でやったと確信して言えるか?」
「雲量は?」
「友軍機や僚機はどうした?」
矢継ぎ早やに出す堀の質問に、パイロットたちの答えはだんだん怪しくなってくる。
大本営といえば「大本営発表」という言葉が思い浮かぶ。
内容を全く信用できない虚飾的な公式発表の代名詞になっている。
ではどうしてこんなことが起こったのか。
意図的にそのような虚偽発表を行ったのか?
どうもそうではないらしい。
海軍の戦果は帰還したパイロットの報告によって確認していた。
パイロットは当然、自分たちの戦果を盛ってしまう傾向がある。
それはパイロットが悪いのではなく、人間とはそのようなものだという前提に立たなければならない。
ところが現場では、その検証が行われていなかった。
パイロットの報告を鵜呑みにして、それを大本営に伝えた。
それをそのまま大本営が発表した。
これが「大本営発表」の正体である。
これは情報に対する日本人の感度の低さが根底にある。
精神主義が横行し、正しい情報収集は下位に位置付けられていた。
結局、日本は、情報戦で負けたといえるのではないだろうか。
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