はじめてのサイエンス/池上彰
「STAP細胞はないんですか?」
こう問われた科学者たちは、「ないとは言いきれない」と答えてきました。
ここに、文系と理系の考え方の違いがあるように思われます。
STAP細胞騒動はマスコミの科学オンチも一因として考えられる。
マスコミの科学者への質問は、「悪魔の証明」と呼ばれるもの。
「何かが存在しないことを証明すること」を、一般に「悪魔の証明」という。
たとえば、ブラックスワンが存在しないことを証明できるのか。
もし、世界のどこかでブラックスワンが発見されたとすれば、その存在が証明されたことになる。
しかし、存在しないことを証明するためには、世界中を隈なく探さなければならない。
どれだけ探しても見つからなかったとする。
しかし、それでも「探し方が悪かっただけだろう」と言われてしまう恐れがある。
いくら努力をしても報われない。
だから「悪魔の証明」なのである。
その「悪魔の証明」をマスコミが求めたのだから、科学者は「「ないとは言いきれない」と言わざるを得ない。
理系の人たちにとって、STAP細胞が存在しないことを証明するのは「悪魔の証明」だからである。
一方、科学を苦手と考える人たちは、「科学者が否定しきれないでいるのだから、STAP細胞は、やっぱりあるらしい」と思ってしまう。
ここから大騒動が始まった。
こう考えてみると、最低限、科学全般の知識は身に付けた方がよいということは言える。
感染症対策のためにはウイルスの基本程度は知っておいた方がいい。
地震対策のためには地学の基礎的知識が求められる。
地球温暖化のメカニズムは科学全般の知識がないと理解できない。
もっと身近な天気予報も科学の知識は不可欠である。
現代に生きる私たちは、もはや「私は文系なので」などと尻込みしているわけにはいかない時代に生きている。
科学的な思考法に欠けていると、第二第三のSTAP細胞騒動が起こるかもしれない。
現代に生きる私たちの、大きな課題の一つであることは間違いない。
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