ユーロの正体/安達誠司
ユーロ圏の財政危機は、不動産バブル崩壊後に金融機関の抱える不良債権問題が深刻化する中、ユーロ導入によって各国の金融政策が縛られ、抜本的な経済の修復策が制度的にとられなかったことに起因します。
そもそもEUもユーロという単一通貨も、景気のいい先進国が景気の悪い後進国を救うという意味が強かった。
その根底にあるのは、
第一に、戦争という過ちを二度と犯したくない、
第二に、国境のない社会を作り、人が行き来しやすいようにする、
第三に、共存共栄、だった。
「経済の平準化」が達成できれば、統一政府による「欧州合衆国」創設が容易になる。
「欧州合衆国」の成立によって、「欧州がアメリカや中国と並ぶ世界経済のリーダーとして、かつての栄光をとりもどす」
これがユーロのシナリオであったはず。
ところが、実際には、ユーロ導入にもかかわらず、不均衡がいっこうに是正されなかった。
さらに、統一通貨が発行されるということは、ユーロ加盟各国の金融政策は、一つの中央銀行の手に集約されることを意味する。
現にユーロ圏では、欧州中央銀行がユーロ圏の金融政策を一手に担っている。
ということは、金融政策が一つになったため、ユーロ参加各国は自国の景気がいくら悪化しようとも、独自の思惑で、景気を下支えするための金融緩和政策を実施することができなくなった、ということ。
ここにユーロ危機の本質がある。
EUもイギリスの国民投票による離脱決定にはじまり、それに続く国が出ることが懸念されている。
アメリカでは崇高な理想を語るオバマ大統領から超現実主義者であるトランプ大統領へとバトンタッチされた。
EUやユーロもそうなのだが、どうも世界中で理想主義と現実主義とのせめぎ合いが起こっているようだ。
そして今年はその分岐点になるかもしれない。
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