〈勝負脳〉の鍛え方/林成之
九回裏、二死満塁、得点差は一点。こんな大ピンチを背負ってマウンドに立っているピッチャーに「リラックスして投げろ」と指示を飛ばす監督は、脳科学の見地からは監督失格といわざるをえません。
「勝負脳」という言葉は、著者の造語。
言語を話す知能、数を計算する知能、空間を認識する知能などとともに、人間の脳に本来そなわっている知能のひとつを、こういう言葉で表したもの。
人一倍の猛練習をして世界のトップレベルの実力を身につけた選手たちが、その力をまったく発揮できずに敗れ去っていく姿を見ることがよくある。
ここ一番というとき力を発揮するにはどうすればよいのか。
多くの人はこんなとき、出来るだけリラックスしようとする。
しかし、これは間違っているという。
リラックスして試合に臨むとどうなるか。
交感神経の機能が高まってこないので、戦うために必要なエネルギーが作られなくなる。
心臓や呼吸器の機能も高まってこないので、脳や手足に酸素が少ししか運ばれなくなる。
つまり、リラックスしていては勝負に勝てないのである。
いったん高まったテンションを勝負の最中に少し静めると、闘争心が消え、集中力が低下し、勝負に対する執着心も低下する。
試合がハードであればあるほど、脳と手足をうまく連動させて、持てる力を出し切った最高のプレーを繰り出さなくてはならない。
人間は命がけで集中すると、自分の立場を忘れ、人格まで変えて目的を達成しようとする。
このような状態にいながら緊張するということは、まだ自分の立場や評価を考えていて、集中しきれていないのだともいえる。
つまり、緊張するのは、集中していないからだというのである。
ナルホド、そうすると多くの人は全く間違ったやり方をしていたのだと言える。
私自身もそうなのだが。
« まずは、「勝ちぐせ」をつけなさい/秋庭道博 | トップページ | 伸びる会社は「これ」をやらない!/安藤広大 »
コメント