馬を売る女/松本清張
「ふ、ふふ。あの車はアベックだよ。アベックが車の中でイチャイチャやってるんだな」
「アベックか。なるほど。それでマイカーばかりなんだな。この遅い時間に」
画伯はつづけ持っていた疑問がいっぺんに解決した。
「……しかし、それにしては車の窓に人が見えないようだがね?」
「中の座席で二人で寝てるんだよ。何をやってるのか分ったもんじゃねえな」
松本清張の短編集である。
4つの短編から構成されているが、いずれも日常生活に見られるありふれた光景からスリリングなミステリーが紡ぎだされる。
「馬を売る」とは「競走馬情報を売って商売をする女」という意味。
彼女は社長秘書という立場を利用して馬主である社長の電話を盗聴し、会員制の競馬予想ビジネスを行う。
そして、このことからトラブルに巻き込まれ殺される。
この短編は、高速道路の安全地帯に停車している車が謎を解くキーとなる。
他の何れの短編も日常の「些細な事」から一気に物語が展開されるものである。
この切り口や展開力は秀逸である。
しかも、このような作品を量産している。
やはり現代の他の作家とは格が違う。
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