人は、誰もが「多重人格」/田坂広志
自分の中に隠れている「幾つもの人格」に気がつき、 それらに光を当て、意識的に育て、 状況や場面に応じて適切な人格で処することを覚えるならば、 自然に「幾つもの才能」が開花していきます。
人は、誰もが、心の中に「幾つもの人格」を持った「多重人格」である。
しかし、通常は、仕事や生活の状況や場面に合わせて、 その「多重人格」の中から、ある人格を選び、働き、生活している。
例えば、経営者であれば、全社員の前で会社の将来ビジョンを語るとき、「ロマンと情熱」を持った人格が前面に出てこなければ、社員の心に火をつけることはできない。
一方、経営会議で経営陣を相手に収益計画の話をするとき、「数字の鬼」とでも呼ばれるような厳しい人格が前に出てこなければ、企業の存続さえ危うくすることがある。
そして、若手社員に対しては、「優しい親父」といった人格で接する一方、幹部やマネジャーに対しては、「強いリーダー」の人格で処する必要がある。
一流のアスリートは、勝負や記録の前でプレッシャーを感じる自分と、そのプレッシャーを楽しむ自分が、バランスよく存在している。
ある熟練の役者は、「演じている自分、それを観ている自分、そして、その二人を、少し離れたところから見つめている自分がいる」と言っている。
この言葉は、その機微を表した言葉であろう。
このような現実があるにも関わらず、多くの人はこれに対して無自覚である。
むしろ、「私ははこんな人間」だと、自分の人格を決めつけ狭めているところがある。
例えば新人が「私の得意分野はこれです」と言って、向いている仕事しかしなければ、自ら将来の可能性を摘んでしまうことになるだろう。
大事なことは、自分のなかにある「複数の人格」を自覚しているかどうかということである。
それを自覚し、置かれた状況や立場によって「異なった人格で対処する」ということを意識的に行うならば、自然に「様々な才能」が開花していく。
「仕事のできる人」とは、「場面や状況に応じて、色々な人格を切り替えて対処できる人」である。
つまり、人は、誰もが「多重人格」だということ。
これを肯定的に受け止め開発し活用することであろう。
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