AI時代の勝者と敗者/トーマス・H・ダベンポート、ジュリア・カービー
勇気や度胸、経験にそぐわないアイデアにかかわる仕事が、人間から奪われることは決してない。また、人間に行動を促せるのは人間だけだ。共感、交渉、熱意といったものも、人間の専売特許である。情熱、ユーモア、喜び、センスにかかわる仕事も、人間の手の内にある。
ある調査によると、今後10年から20年の間で、仕事の半分近くがAIやロボットにとって代わられるという。
自動化ははっきりと3つの段階に分類できるという。
第1の自動化では機械が、肉体的に辛い危険な仕事から人間を解放した。
これは、産業革命後期の時代に相当する。
こうして機械が、肉体的にきつい仕事を引き受けるようになると、人間は高次の段階に進んだ。
するとそこで、第2の自動化が生まれた。
この自動化の対象となったのは、もはやきつい仕事や危険な仕事ではない。
退屈な仕事である。
そして今、第3の自動化の時代が来ている。
機械が知能を向上させ、私たちの一挙一動を見守るようになるのだ。
いまやコンピュータが人間より優れた判断を下せることは、さまざまな状況下で証明されている。
膨大な量のデータ分析をする作業は、ますます機械に置き換えられていく。
弁護士は、この点でもやはり仕事を奪われやすい傾向にあるという。
法律業務の大半は文書の分析だからだ。
大量の過去の判例から、合致するものを探し出すことにおいては人はコンピュータにかなわない。
では、人間がAIより優れた点は何か。
人間の脳がいまだに自動システムより優っている点、それは幅の広さである。
数多くのことをうまく成し遂げられる能力である。
人間は、文字を読み、計算し、画像を認識し、言葉を理解し、壊れやすいものをつまんで置くことができる。
コンピュータは深さでは人間と勝負できても、幅ではまだ人間にかなわないのである。
つまり、単純作業や間接作業を機械に任せることにより、人間は企業や自身の付加価値を向上させ、新しい製品やサービスを創造する活動に専念できる時代が訪れつつあるということではないだろうか。
この時代の流れを正しく認識し準備をすればより明るい未来が到来する。
過去の産業革命がそうであったように、AIやロボットの進化をむしろ、ポジティブなものととらえるべきであろう。
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