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2017年7月30日 (日)

二人で一人の天才/ジョシュア・ウルフ・シェンク

Photo まわりを魅了する人と、やんちゃ者。優しい微笑みの人と(いたずらをするときさえ慎重だった)、茶目っ気のある笑顔の人(永遠の不安定さを隠しとおした)。彼らと一緒にいると、2人の違いが絶えず補完し合うことに感銘を受けた。「ジョンにはポールの注意力と忍耐が必要であり、ポールにはジョンのアナーキーな横道の思考が必要だった」と、ジョンの最初の妻シンシア・レノンは書いている。  

この世を変えるような偉大な創造は一人の天才がそれを生み出す。

これが一般的な常識である。

ところが本書は、偉大なペアの化学反応によってそれらは生まれる、と言っている。

偉大なペアは大きく違う2人であり、かなり似ている2人でもある。

この相反する要素が同時に成り立つことが、深い感情的な絆を生み、クリエイティブ・ペアに欠かせない衝突を駆り立てる。

創造的な2人が出会って「クリエイティブ・ペア」を組み、関係が発展して、全盛期を謳歌し、突然あるいは必然的な幕切れを迎える。

本書は、そんな「ペアの生涯」を6つのステップでたどりながら、創造性と人間関係のダイナミズムを描き出している。

ステップ1:邂逅

ペアを組むことになる相手と出会い、人間関係の化学反応が始まる。

ステップ2:融合

互いに関心を持った2人はペアという呼び名にふさわしくなり、「私」より「私たち」が前面に出てくる。

ステップ3:弁証

2人の役割や位置関係が見えてくる。

ステップ4:距離

さまざまなバランスを取りながら関係が発展する。

ステップ5:絶頂

やがて2人のクリエイティビティが花開くが、ペアの力学に微妙な変化も生じる。

ステップ6:中断

そして、出会いがあれば別れが訪れる。

だたし、真のペアになった2人の関係は、本当の意味で終わることはない。

なかでも象徴的な存在は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーである。

彼らの軌跡はまさに、クリエイティブ・ペアの6つのステップを再現している。

ポールは慎重で几帳面だった。

いつもノートを持ち歩き、詩やコードをていねいに書き留めていた。

対照的に、ジョンはカオスのなかを生きていた。

いつも紙切れを探してはアイデアを書きなぐった。

ポールはコミュニケーションの達人だったが、ジョンは自分の考えをうまく説明できなかった。

ポールが外交官なら、ジョンは扇動者だ。

ポールは穏やかな物言いで、ほぼどんなときも礼儀正しい。

ジョンは尊大な物言いで、きわめて無礼だった。

ポールは1つのパートを仕上げるために何時間でも費やすが、ジョンは気が短くて、すぐに次へ行きたがる。

ポールは自分のやりたいことを明確に理解していて、批判されると腹を立てることも多かった。

ジョンのほうがはるかに神経は図太く、他人の言葉に耳を傾けた。

特別なこだわりがないことなら変化も素直に受け入れた。

この2人が融合したとき、あのビートルズの全盛時の名曲の数々が生まれた。

そのことを考えると、「二人で一人の天才」という本書の主題は確かに頷けるものがある。

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