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2017年7月 5日 (水)

海上護衛戦/大井篤

Photo 戦争における経済封鎖というものの効果がもっと認識されていたならば、ことに日本側軍部によってそれが認識されていたならば、太平洋戦争はもっと早く終止符がうたれ、少なくとも、昭和二十年八月におけるこの二つの不幸な出来事(原爆投下とソ連参戦)はなしにすまされたのではないだろうか。いや、そもそも日本が太平洋戦争そのものへの途を歩むことになったのは、日本経済の海上依存の致命性に対する指導層の認識が、不徹底だったからではないのか。

本書は、海軍で海上護衛総司令部参謀をつとめ、シーレーン確保の最前線に立っていた著者がその戦略を綴った護衛戦の貴重な体験記である。

戦争というものは人間、社会、国家、さらに大きくは人類文明全体の長所短所を丸裸にしてあらわすものである。

これを研究することは、必ずしも、将来の戦争に備えるためのものとは限らない。

それを研究することは、人間、社会、文明の探究にも役立つ。

戦争そのものは悪であり、避けねばならぬものであるが、そのことをハッキリさせ、それを避ける方法を考え出すためにも、戦争の経過を回顧し、これを分析し、批判することが大切だ。

二度と無駄な戦争を起こさないためにも、戦争を研究することは大切だ。

著者が属していた海軍には二大重要作戦任務があった。

一つは主として連合艦隊の相当する敵艦隊撃滅の任務。

もう一つは海上護衛司令長官の指揮のもとに行う海上交通保護の任務である。

著者は後者の参謀を務めていたわけだが、日本の海上護衛への無理解が無謀な戦争を起こす原因を作り、また長引かせたのだと言っている。

護衛作戦が「沈黙の作戦」と言われていた。

この「沈黙」ということ、「発表されない」ということは「認められない」ということである。

人間は生きている以上、自分の存在を認められたいと思っている。

その存在を認められないほどバカらしいことはない。

誰だって、「最も存在価値の認められるものに寄与したい」のは人情だ。

こんなことからも、護衛などはとかく二の次にされやすかった。

だから「ヒト」「モノ」「カネ」すべてが不足していた。

端的に言えば、日本が無謀な戦争に突入したのは、石油を断たれたからである。

シーレーンの確保がいかに重要なことであるか、歴史から学ぶ必要があるのではないだろうか。

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