ホームレス作家/松井計
そして、やっと私は思い至った。〈良人失格〉〈父親失格〉〈作家失格〉〈勤め人失格〉〈浮浪者失格〉と、あらゆるものから〈失格〉の烙印を捺された私が、何か一つ、取り戻すことができるとしたら、私は迷わず作家の部分を選ぶのだと。
家賃滞納により強制退去を命じられ、家族は緊急避難施設に保護される。
自分は路上での生活を余儀なくされる。
毎日、命を長らえるためだけに必死になっている状態。
おそらく人間としてのプライドはズタズタだろう。
食べるために必死になる中で、自分との対話を繰り返す。
「自分は何者なのか」と。
本書はその間の心の軌跡をたどっている。
そしてたどり着いた結論は「自分は書くしかない」のだということ。
作家としてのアイデンティティに立ち戻ったともいえる。
その後、その体験を綴った本書を出し、ベストセラーになる。
まさに災い転じて福とするということであろう。
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