一流の習慣術/奥村幸治
ニューヨーク・メッツのキャンプに参加させてもらっていた当時、メッツに在籍していた野茂英雄さんと吉井理人さんに「日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグで、何に違いを感じましたか?」と質問したら、ふたりとも同じことをおっしゃいました。「コーチングが違う」と言うのです。
「技術面や体格面の差よりも、とにかくコーチングの違いが大きい」
ふたりはそう言いました。
日本のプロ野球のコーチの指導は教えることが中心。
日本ではかつての名選手がコーチになる。
彼らはそれぞれ、独自のバッティング理論やピッチング理論がある。
それを選手に教える。
いや、教えるというより押し付ける。
おそらく中には潰された選手も多く存在するだろう。
一方メジャーリーグのコーチングの基本は「聞き出す」こと。
「お前のことはお前がいちばんわかっているはずだ。だから、私にお前の気持ちを伝えてくれないと私は何もわからない」
監督もコーチもそう言うのだという。
コーチに自分が困っていること、目指していることを言葉にして伝える過程で、自身を客観的に振り返る習慣ができる。
聞き手が理解できるように感覚を「言語化」するプロセスで、それまで気づかなかった問題点や目標が明らかになってくる。
これを聞き出すのがコーチングである。
これが大事なのは、スポーツの世界だけでなくビジネスの世界でも同じ。
組織のなかでは思っていることを素直に言える環境を作ったり、それを聞き出してあげたりする仕組みを作ることも大切なのではないだろうか。
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