財務官僚の仕事力/榊原英資
中央省庁において大臣はいわば象徴的存在。実質的なリーダーは事務次官や局長なのです。しかし、それを表に出しては具合が悪いので、大臣がすべてを理解して仕切っているように対外的に見せる官僚独特のノウハウが必要になります。
そこで、「ワル」の出番となるわけです。丁寧に大臣に報告しつつ、一方では新聞記者らに根回しします。大臣を立て、さも大臣が仕事をしたように世間に報道してもらうのです。
財務省は「省庁の中の省庁」といわれる。
試験の成績がトップクラスの秀才を入省させているからだけではない。
各省庁の歳出の役割を一手に担い、しかも税金の徴収など歳入を担当する国税庁を外局として抱えており、歳入・歳出の両方を牛耳っているからである。
そして、その実質的なリーダーが事務次官や局長である。
上手に大臣を立て、またあらゆる根回しをして、さも大臣がやったように対外的に見せる。
つまり、黒子に徹して大臣を立てるのである。
予算案にしても法案にしても、実質的には官僚がつくっている。
ただ、三権分立の建前から予算や法律は立法府である国会がつくるものとなっている。
そして中央省庁は行政府といえども、そのトップは大臣である。
自らは黒子に徹して大臣を立てる。
極めて重要な役割である。
そのように考えると、今話題になっている前川元事務次官はどうなのだろう。
マスコミは英雄視しているが、どうもそうは思えない。
何しろ座右の銘が「面従腹背」だというのだから。
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