戦争の日本近現代史/加藤陽子
日本側が展開していた論理は、満鉄併行線問題にしろ、商租権問題にしろ、ボイコット問題にしろ、徹頭徹尾、条約で規定された守られるべき日本の権利が蹂躙された以上、それを実力で守ってどこが悪いのかというものでした。日本を正とし、中国を悪とする、二分法の論理です。わたくしはここに、先ほどみた、関東軍参謀や満鉄調査課員松木、のみならず、国民の世論が、事変の適法性にこだわった理由があるのだと考えています。
どうして戦争が起こるのか?
無謀な戦争を起こさないためには、それを知る必要がある。
本書は、為政者や国民が、いかなる歴史的経緯と論理の筋道によって、「だから戦争にうったえなければならない」、あるいは、「だから戦争はやむをえない」という感覚までをも、もつようになったのか。
そういった国民の視角や観点や感覚をかたちづくった論理とは何なのか、という切り口から、日本の近代を振り返っている。
読んでみて、考えさせられることは、今から思えば「おかしい」と思うことも、当時はみな合理的な思考に基づいて行動していた、ということ。
つまり、今の時代の常識で、当時のことを振り返ってみても、解明できない部分があるということ。
当時の新聞の論調、軍部の考え方、国民の意識、それらが合わさって「戦争やむなし」という空気が醸成されてきている。
ここから一つ言えることは、国民の意識の多様性がなくなり、一方方向に偏ってしまったときは、非常に危ないということである。
多様な意見を尊重する環境をつくり上げることが必要ということではないだろうか。
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