渡された場面/松本清張
答 信子ハ、私ト景子ノ間ノコトハマッタク知ッテナカッタデス。
問 オヤ、何ト言ッタ? 信子ト言ッタネ? 見タコトモ会ッタコトモナイ真野信子ヲ、ソンナ馴レ馴レシイ調子デ信子ト呼ビ、シカモ信子ハ私ト景子ノ間ヲ知ッテナカッタ、トイウノハ、ドウイウコトカ。君ハ思ワズ口走ッタネ。
上記は下坂容疑者への警察訊問調書の最後の箇所。
信子のことを知らぬ存ぜぬと言い続けていた下坂の矛盾が露呈した瞬間。
この小説はここで終わっている。
奇想天外な話である。
全く違う二つの殺人事件を、同人雑誌に掲載された一つの小説が結びつける。
無名の作家の書いた一見凡作に見える作品のなかで6枚程度の部分だけが秀逸だった。
実はこの箇所は盗作だった。
そして、これは単なる盗作騒動で終わるのでなく、二つの殺人事件を結びつけるカギとなる。
そのキーを握る人物が信子という女性。
若い女性二人を、もてあそび二人とも懐妊させ、邪魔になった一方の女性である信子を殺害してしまう有名陶芸店の下坂一夫。
坊ちゃん息子の下坂は道楽で小説を書いていて、信子は下坂の為にと、密かに著名作家の原稿6枚を下坂に与えてしまう。
下坂は、その原稿を盗用して同人雑誌に投稿し、それが評判となる。
それをある刑事が発見する処から話が展開する。
しかし、殺され土中に埋められた信子は、余りにも可哀そう過ぎる。
身勝手な男に弄ばれ、何一つ報われず、殺されてしまうのだから。
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