絶望は神さまからの贈りもの/ひすいこたろう、柴田エリー
「ビートルズがまさにビートルズとして育ったのはリヴァプールじゃない、ハンブルクだ。ハンブルクで、ぼくらは本当のロック・バンドに成長したんだ。12時間もぶっ続けで言葉の通じない、しかも音楽などまるでお目当てでない種類の人間をのせるだけのものを、ぼくらは身につけていた。ひどい夜(「ア・ハード・デイズ・ナイト」)だった。あのひどい犬なみ、いや、それ以下の日々の中で、一番大切な何かを自分たちのものにしていた……」
これはジョン・レノンの言葉。
ビートルズの基礎を作ったのは、ドイツのハンブルクのクラブでの演奏の仕事だと言われる。
当時のハンブルクは、銃声が鳴り響き、ギャングが大手を振って歩く犯罪都市だった。
しかも、ハンブルクでの仕事は、食事は昼に一度、ミルクをかけたコーンフレークが1杯出されるだけ。
クラブではひと晩で10~12時間と出ずっぱりのステージ。
控室はトイレ。
宿泊先は隣の映画館の裏の物置。
そして、客は、音楽なんか聞く気もない荒くれ者たちで、元受刑者もいた。
そんな生活を5カ月続けたある日、メンバーのジョージが18歳以下であることがバレて、逮捕され国外追放に。
さらに、寝泊まりしていた映画館でポールがマッチをつけたところ壁が黒コゲに。
ボヤ騒ぎとなり、放火の容疑でこれまた国外追放に。
こうしてメンバーは、生まれ育ったイギリス、リヴァプールに戻らざるを得なる。
みんな失意のドン底。
こんな最悪の状況を体験したからこそ、今のビートルズがあるというのである。
確かに絶望は神さまからの贈りものと言えよう。
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