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2017年10月 4日 (水)

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史/磯田道史

Photo 司馬さんの描く人物像を史実ではないと言う人がいますが、それは一面的には正しい。しかし先に述べたように、司馬さんは大局的な視点、世の中に与えた影響という点から、可能なかぎり単純化して人物評価していることを理解しなくてはなりません。司馬作品を読むときには、一定の約束事、言わば「司馬リテラシー」が必要なのです。

司馬史観という言葉がある。

司馬氏は、ただの歴史小説家ではない。

歴史をつくる歴史家だった。

歴史文学というものは大きく三つに分けられる。

ひとつは歴史小説、もうひとつが時代小説、そして、史伝文学というもの。

史実に近い順番でいうと、史伝文学、歴史小説、最後に時代小説である。

司馬氏の小説は史伝文学に近い歴史小説。

司馬氏は筋骨隆々とした英雄・豪傑ふうの人物には、あまりシンパシーを抱かない。

明智光秀や黒田官兵衛、大村益次郎といった、どちらかと言えば知的な軍師・参謀ふうの人物にビューポイントを置き、その目線から見た権力体を描くのが得意だった。

そこから司馬氏の考えるリーダー論や組織論が見えてくる。

たとえば「組織は変質する」というのは、司馬氏の重要な歴史観のひとつ。

最初は理想があるけれども、だんだん老化して、おかしなことをおこない始めるという、古今東西、あらゆる組織や人物に言えること。

時代も同じように、だんだん変質してくる。

その変質を歴史の動態、ダイナミズムとして、歴史小説の中で表現した。

なぜ当時の陸軍では、あのような不合理がまかり通ったのか。

「深く考えない」という日本的習慣はなぜ成立するのか。

明治時代の日本の軍隊は常に新しい、強力な武器をもって相手を圧倒する精神があったかもしれないのに、いつから日本は、不合理がまかり通る国になってしまったのか。

これらの問いこそが、司馬氏の創作活動の原点だった。

そんな目をもって司馬氏の小説を読むと、また違った気づきが得られるのではないだろうか。

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